社青同中央機関紙『青年の声』

社青同中央機関紙『青年の声』 月2回刊(毎月第1、第3月曜日発行)

福島第1原子力発電所・重大事故から10年〜日本社会を変えるたたかいと原発をなくすたたかいは一体の課題 座談会〜 2021.1.4付号

 2011年3月11日に発生した巨大地震と津波により、福島県浜通り東京電力福島第1発電所、福島第2発電所に大きな被害が発生しました。福島第1発電所では複数回の爆発事故が発生し、放射能汚染が福島県内だけでなく、東北や関東など広範囲に広がりました。この重大事故により、福島第1原発が立地している自治体を中心に、多くの人々が長期にわたる避難を余儀なくされました。事故の発生から10年が経とうとする現在に至っても4万人とも言われる人々が避難生活を余儀なくされています。社青同福島地本でも、原発事故の発生直後は浜通り、中通りに住む同志を中心に、家族や自身の県内外への避難を余儀なくされた同志たちが少なくありませんでした。現在も、複数の同志が避難生活を継続しています。原発事故は、人々からふるさとや家庭や職場を奪い去りました。カネによって人々が分断される資本主義社会の冷酷な現実にも直面させられています。その悔しさを忘れず、すべての原発をなくすたたかいが求められています。今回は、社青同いわき支部と双葉支部の3人の同志に、原発事故からの10年間や職場・地域の現状、さらにこれからの反原発・脱原発のたたかいの課題について振り返っていただきました。———

復興で地域がすっかり変わった

Nさん 原発事故の発生から10年が経ちました。2020年は「コロナ禍」もあって、福島のことは忘れられているように感じます。「緊急事態宣言」で大騒ぎになったけど、そもそも「原子力緊急事態宣言」は解除されていないことを忘れていません。

Sさん 僕らにとっては、原発事故はまだ現在進行形の問題ですよ。楢葉町の自宅からいわき市役所まで車で出勤していると、対向車線はずっと原発や中間貯蔵施設の方に向かうトラックやバスで渋滞している。汚染水をどうするか、といったテレビ番組も毎日やっている。「汚染水は放水するしかない、なんて良くも簡単に言ってくれるな」と思っています。

Mさん S君はこの前、双葉町にできた「東日本大震災・原子力災害伝承館」にいってきたんでしょ。俺は関心も興味も持てないから行ってない。そもそも大熊町の自宅に戻る機会も少ない。頬化の大熊町民が「伝承館」をどう持っているかはわからないけど…。よくS君は「伝承館」に行ったなと思った。———

大熊町内の職場には戻らない

Nさん 市役所の職場で言えば、規模は小さくなりましたが、まだ除染対策の部署が残っています。除染事業の後始末があるようです。原発事故関連の賠償請求も課題として残っています。私が以前にいた資産税課では、原発立地地域からの財産の異動にあたっての特例措置は続いているので、申請があれば対応しています。

Sさん 私が働いている市民課に、厚生労働省の関連機関から数百人分の住民票の請求がありました。原発事故の直後に原発内に入った人の情報を集めているとのことでした。最近の情報なら追いかけられるけど、事故直後の情報は分からないものが多いですね。

Nさん 市民から、「避難しているヤツは税金を払っていないのでは」といった思い込みで苦情が自治体間では避難者の情報を共有していて、交付税の措置も行われています。ただ、これにともなって、事務手続きが多くなっているのは間違いないです。

Sさん 地域の行政区が負担している街灯の電気代はどうするのか、という意見が出ていました。面と向かって「あいつらは!」となりはしませんが…。避難している住民は、いわき市内に住んでいても、行政上の手続きは住民票のある自治体の支所・出張所などにおきますもんね。

Mさん 実際に避難していわき市内に住んでいるけど、住民票をいわきに移すといった話は聞いたことないもんな。大熊町内にはもう住まないとしても、家もお墓もあるし、住民票まで映してきっぱり引き払うという気持ちにはなれない人とが多いと思うな。———

原発にからめとられた地域経済

Nさん 昨年10月の社青同の全国大会で、北海道の同志が高レベル廃棄物の処分場を誘致しようとする行政の動きに抵抗している報告を聞いた。福島で、自己の前に原発立地地域の住民の意識調査に取り組んでいたのを思い出した。「原発のおかげで」「基地のおかげで」という言い方があるけど、実際に住民の意識調査に取り組むなかで、東京電力が地域におカネを落とさなくなっていた状態が確認できた。北海道や、全国で頑発反対のたたかいを進めている仲間たちに、福島での経験を改めて発信できるようにしたいと思います。

Sさん 原発事故の翌年の反核平和火リレーで、浜通りのある市役所前での集会で、職員労働組合の委員長が「今までこの地域には原発の恩恵があったのは否定できない。でも、これからは若い人たちが中心となり、地域作りをどのように進めるのか議論して欲しい」と話していました。

Mさん 原発や関連する事業で雇用があったのは間違いないからな。

Nさん 原発事故の前は、私が地域の青年会で集まると、参加者の半分は原発関連、電力会社関連の仕事をしている仲間たちでした。消防団員も、半分は役場の職員、半分は原発関連、という感じでした。———

・購読のご希望はお近くの分局、取継所もしくは社青同中央本部まで。

 月2回刊(毎月第1、第3月曜日発行) 定価1カ月500円 1部250円 個人送料126円

トップページへ

コメント

タイトルとURLをコピーしました